家は残したい、借金は減らしたい|個人再生でマイホームを守るには?

家は残したい、借金は減らしたい|個人再生でマイホームを守るには?

借金の返済に苦しみながらも、「家だけは手放したくない」「子どもの通学や老後のことを考えると、住まいは守りたい」と悩む方は少なくありません。

とくに住宅ローンと他の借金が重なってしまった場合、毎月の返済が首を締め、生活そのものが成り立たなくなってしまうケースもあります。

そんな状況で選択肢となるのが「個人再生」という制度です。

多くの方は「借金整理=自己破産」というイメージを持っているかもしれませんが、自己破産をすると基本的に不動産などの資産はすべて処分されます。

一方で、個人再生は住宅ローン特則という制度を利用すれば、マイホームを残したまま借金を減額できるという特徴があるのです。

このページでは、住宅を守りながら借金を整理するための制度として注目されている個人再生について、仕組みや条件、注意点までわかりやすく解説していきます。

住宅ローンがある人でも債務整理はできる?

借金の相談窓口を訪れる方のなかには、「住宅ローンがあるから債務整理は無理なのでは?」「持ち家がある以上、破産しか選べないのでは?」と誤解している方も多くいらっしゃいます。

たしかに自己破産では住宅は原則として処分対象となります。

住宅ローンが残っている家は債務者の資産とみなされ、裁判所を通じて換価・処分されるのが一般的です。

しかし、個人再生であれば住宅を残すという選択肢が現実のものになります

その鍵となるのが、「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」と呼ばれる制度です。

この制度を利用することで、住宅ローンはこれまで通り返済を続けながら、それ以外の借金を大幅に減額するということが可能になります。

つまり、住宅ローンだけはこれまで通り返済を継続し、その他の借入(消費者金融・カードローン・クレジット債務・事業用借入など)を原則5分の1程度にまで減額し、3年(最長5年)で分割返済していくというのが基本的な流れです。

個人再生とは?|住宅を守りながら借金を減額する制度

個人再生は、裁判所を通じて借金を大幅に減らし、残った額を分割で返済するという法的な再建手続きです。

自己破産と異なり、財産をすべて失うわけではありません。

一定の収入があることを前提に、生活を維持しながら返済していくことを目的とした制度です。

個人再生には2種類あり、それぞれ以下のような特徴があります。

小規模個人再生

個人事業主やフリーランスなども対象になる制度で、債権者の同意が必要です。

借金の総額が5000万円以下であること、将来的な継続的収入があることが前提です。

給与所得者等再生

サラリーマンなどの安定した給与所得者向けで、債権者の同意が不要という利点があります。

ただし、支払額の計算が厳格になる場合もあります。

いずれも、住宅ローン特則を使うことでマイホームを手放さずに済む可能性が高まります。

「住宅ローン特則」とは?|マイホームを手放さずに済むカギ

「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」とは、個人再生手続きの中でも住宅ローンにだけ特別な取り扱いを認める制度です。

これは、借金全体の整理とは別に、住宅ローンについては従来通りの返済を続けることで、家を残すことを可能にする仕組みです。

この制度があることで、住宅ローンの返済は従来通り続けつつ、カードローンや消費者金融などの債務だけを大幅に減額して返済することができるのです。

例えば、住宅ローン残高1500万円+カードローン400万円という方がいたとします。

このうち、住宅ローン1500万円は据え置き、カードローン部分だけを80〜90%減額し、3〜5年かけて返済していく、という形になります。

この特則を活用することで、家族との生活基盤を守りながら、借金の負担だけを軽くするという選択肢が現実のものになります。

住宅ローン特則を使うための条件とは?

住宅ローン特則は、誰でも自由に使えるわけではありません

適用を受けるためには、いくつかの明確な条件を満たす必要があります。

以下の条件をクリアしていなければ、残念ながら住宅を残すことは難しくなります。

まず最も重要なのは、住宅ローンを返済している家が本人の居住用であることです。

たとえば、別荘や投資用不動産、賃貸住宅として貸し出している家などは対象外となります。

あくまで「本人が住んでいる家」に限って、住宅ローン特則は認められます。

さらに、住宅ローン以外の借入が住宅に抵当権として設定されていないことも重要です。

たとえば、事業資金の担保として同じ不動産に別の金融機関の抵当権が付いていた場合は、住宅ローン特則を使うことができなくなる可能性が高いです。

そのほかにも、以下のような条件があります:

  • 本人または同居の家族が所有している住宅であること(他人名義では不可)
  • 住宅ローンが分割払いで契約されていること(一括返済前提の契約は対象外)
  • 個人再生の申立て時点でローンの大幅な延滞がないこと(3ヶ月以上の延滞があると難しくなることも)

これらを満たしていれば、個人再生の手続きとあわせて住宅ローン特則の申立ても行うことで、マイホームを守る道が開けます。

ただし、条件の充足可否は専門的な判断を要するため、弁護士や司法書士への相談が不可欠です。

個人再生で家を守るために気をつけること

たとえ住宅ローン特則が利用できる条件を満たしていたとしても、注意すべきポイントがいくつか存在します

それを知らずに手続きを進めてしまうと、最終的にマイホームを失ってしまうリスクもあります。

以下では、とくに注意すべき点を解説します。

まず第一に、「住宅ローンの返済は引き続き続けなければならない」という現実です。

個人再生をしても住宅ローンが免除されるわけではありません。

したがって、家を残すことを選ぶ以上、住宅ローンをこれまで通り返済する能力が求められます

また、個人再生では他の借金が大きく減額されるとはいえ、その分を3〜5年のあいだ毎月支払っていく必要があります。

つまり、住宅ローンに加えて新たな返済義務が生まれるということです。

ここで収入と支出のバランスをきちんと把握しておかないと、再生計画が崩れてしまう恐れがあります。

さらに、固定資産税や修繕費など、家を維持するための出費も無視できません。

個人再生を選んだあと、想定外の出費により生活が回らなくなるケースもあるため、事前に十分な試算をしておくことが大切です。

最後に注意したいのは、金融機関からの抵抗です。

住宅ローン特則を申し立てる際、ローン会社からの不同意や手続き上の争点が生じることがあります。

このようなトラブルを回避するためにも、専門家のサポートを受けることが成功への近道といえるでしょう。

家を残すために、個人再生と自己破産を比較してみよう

借金問題の解決手段として「自己破産」と「個人再生」がありますが、住宅を守れるかどうかという観点では両者に決定的な違いがあります。

自己破産の場合、原則として住宅は手放すことになります。

これは、すべての資産を債権者に公平に分配するという制度の性質上、価値のある不動産は換価・処分されるのが基本だからです。

たとえ住宅ローンを完済していても、持ち家がある限り、処分の対象になります。

一方で個人再生は、住宅ローン特則を利用することで、家を残すことができるという大きなメリットがあります。

さらに、自己破産では原則として官報に氏名が掲載されたり、一定期間の職業制限(士業・会社役員など)がありますが、個人再生ではそうした制限が発生しない点も重要です。

ただし、個人再生には安定収入が必要であり、支払い能力がまったくない場合は適用が難しいこともあります。

そのため、以下のような視点で比較検討すると良いでしょう。

項目 自己破産 個人再生
住宅の扱い 原則処分 特則で保有可能
借金の免除 全額免除が原則 一部免除(5分の1〜)
職業制限 一部あり なし
官報掲載 あり あり(共通)
安定収入 不問 必要

「家だけは失いたくない」とお考えの方にとっては、自己破産ではなく個人再生の方が現実的な選択になることが多いのです。

個人再生でマイホームを守った人の事例

ここでは、実際に個人再生によってマイホームを守りながら借金整理を成功させた方の事例をご紹介します。

あくまで仮名・属性を一部変更した参考事例ですが、状況の近い方にとっては現実的なヒントになるかもしれません。

事例:東京都在住・Aさん(40代・会社員・既婚・子ども2人)

Aさんは地方銀行からの住宅ローン残高が約2,300万円、加えてカードローン・ショッピングローン・自動車ローンなどの債務が約500万円ありました。

子どもの教育費や車検、家の修繕費などが重なり、気づけば月々の返済が20万円近くに膨れ上がっていたといいます。

「このままだとローンを滞納しそうで怖かった。

けど、子どもたちを転校させたくなかったし、妻も『せめてこの家だけは守りたい』と言ってくれていて……。

Aさんは最初、自己破産を検討して弁護士に相談しましたが、安定した収入があること、そして住宅ローンが継続して支払える見込みがあることから、個人再生での手続きを勧められました

弁護士のサポートのもと、住宅ローン特則を活用して個人再生を申立て、住宅ローン以外の借金は100万円にまで減額

月々の返済額は8万円程度に抑えられました。

「正直、手続きは不安でした。

でも、一歩踏み出してからはどんどん気持ちが軽くなった

今はローンも返せてるし、家族との関係も前よりずっと良くなりました。

このように、適切な制度を選択し、専門家の支援を受けることで、住まいと生活の再建を両立できたケースも少なくありません。

個人再生に向いている人・向いていない人

個人再生は非常に有効な制度ですが、誰にでも向いているわけではありません

制度の特性を踏まえ、自分がこの手続きに合っているのかを判断することが重要です。

<個人再生に向いている人>

  • 安定した収入がある(会社員・公務員・年金受給者など)
  • 住宅ローンの支払いを続けられる見込みがある
  • 借金総額が5,000万円以下で、主に無担保債務である
  • 家族や持ち家を守りたいという強い意志がある
  • 自己破産に抵抗がある(職業制限や心理的負担など)

このような方は、個人再生によって生活再建と資産保全を両立できる可能性があります。

<個人再生に向いていない人>

  • 無職や不安定な収入しかない
  • 住宅ローンの返済が困難(既に延滞しているなど)
  • そもそもマイホームが不要またはすでに売却予定
  • すぐに返済義務をなくしたい(借金の全免除を希望している)

このような方には、自己破産や任意整理の方が適している場合もあります。

制度の選択は、自身の生活状況や価値観に応じて慎重に行うことが大切です。

まとめ|家を守りたいなら早めの行動がカギ

もしあなたが今、借金に追われながらも「家族のためにこの家だけは守りたい」と願っているなら、個人再生はその思いに応える制度かもしれません。

もちろん、手続きには時間も手間もかかります。

しかし、それでも家を守りながら生活を立て直せるという意味で、非常に現実的で価値のある選択肢です。

逆に、何もしないままでいると、選べる選択肢がどんどん減っていくのも事実です。

返済の延滞が重なれば、住宅ローンの分割払い権利を失い、一括請求・競売という事態に発展することもあります。

そうなる前に、まずは専門家に相談してください。

法律事務所や司法書士事務所では、初回相談を無料で受け付けているところも多くあります

「まだ大丈夫」と思っていても、相談したときにはもう手遅れだった……というケースは少なくありません。

あなた自身と、ご家族の生活を守るために、一歩踏み出す勇気を持ってみてはいかがでしょうか。

よくある質問|住宅を残すための個人再生Q&A

Q. 住宅ローンがある家でも、個人再生で手放さずに済みますか?

A. はい、住宅ローン特則を使えば、持ち家を残したまま個人再生することが可能です。

条件を満たす必要がありますが、多くの方がこの制度でマイホームを守っています。

Q. 固定資産税を滞納しています。個人再生に影響しますか?

A. 滞納状況によっては住宅ローン特則が使えなくなる場合もあります。

早めに相談し、税の分割納付を含めた計画を立てることが重要です。

Q. 家族に知られずに個人再生できますか?

A. 通常は同居家族にも影響が出るため、完全に秘密で進めるのは難しいことが多いです。

住宅を守るためには協力が必要な場合もあります。

Q. 住宅ローンを延滞していると、特則は使えませんか?

A. 一定以上の延滞がある場合、特則の適用が認められないことがあります。

ただし、個別に判断されるため、まずは弁護士などの専門家に相談を。

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