病気やケガでもらえる傷病手当金で支給される金額と条件は
傷病手当金とは、病気やケガにより働けなくなった際に、その生活を支えるために支給される給付金です。
これは傷病手当金は健康保険の一つの制度として設けられており、主に会社員や公務員などが加入している健康保険の加入者を対象としています。
その背景には、疾病や負傷による一時的な労働不能が家計に大きな影響を与えることがあるという社会的な問題があります。
働けない期間中でも生活費を確保できる仕組みを作ることで、被保険者やその家族が安心して療養に専念できるようにすることが目的です。
傷病手当金で支給される金額
傷病手当金の支給額は「標準報酬日額」の3分の2相当額が1日分として支給されます。
この標準報酬日額とは、被保険者が加入している健康保険の保険料算定の基礎となる報酬月額を30日で割ったものを指します。
つまり、実際の給与額に近い金額が基準となるため、生活水準をある程度維持できるよう配慮されています。
傷病手当金で支給される条件
傷病手当金を受け取るためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
まず、病気やケガによって仕事を休まなければならない状態であることが前提です。
そして、その休業が連続する3日間の待期期間を含め、4日目以降も継続している必要があります。
この待期期間には、土日祝日や有給休暇などを含むため、勤務日でなくてもカウントされます。
また、支給を受けるには、給与が実際に支給されていないこと、または支給されていても傷病手当金より少ない場合に限られます。
この条件により、重複での給付が行われることを防ぎつつ、生活の最低限の補助を保証しています。
傷病手当金がもらえる期間は?
支給される期間には上限があり、基本的には最長1年6ヶ月間です。
この期間は、初めて支給が開始された日からの通算で計算されるため、間を空けて再び休業した場合も、通算で1年6ヶ月を超えると支給は終了します。
この仕組みによって、長期間の療養が必要な場合でも一定期間は経済的な支えを受けられるようになっています。
傷病手当金の申請手続きについて
傷病手当金を受け取るためには、申請手続きが必要です。
この手続きは、自動的に給付されるわけではなく、被保険者自身が所定の書類を準備して加入している健康保険組合や協会けんぽに提出する必要があります。
申請に必要な主な書類は以下のとおりです。
傷病手当金支給申請書
この書類には、本人の記入欄のほか、医師が証明する部分や事業主が記載する部分があります。
医師の証明が必要なため、定期的に診察を受けていることが前提です。
給与明細や賃金台帳
給与の支払い状況を確認するために必要な場合があります。
給与が支給されている場合、その金額によって傷病手当金が調整されるためです。
申請書類の作成や提出には手間がかかるため、療養中の負担を軽減するためにも、事業所の総務部門や家族と連携して進めることが推奨されます。
傷病手当金をもらう際の注意点
国民健康保険でももらえる?
傷病手当金の制度は「国民健康保険」には適用されません。
国民健康保険は主に自営業者や無職の方が加入する保険であり、その給付内容は健康保険とは異なります。
そのため、自営業者が病気やケガで働けなくなった場合には、このような手当金が支給される仕組みがありません。
国民健康保険には傷病手当金の制度がないため、自営業者やフリーランスの方は、病気やケガで働けない場合に備えて民間の保険や所得補償保険に加入しておくことが推奨されます。
障害年金や労災保険をもらっている方は注意が必要
たとえば、労災保険から休業補償給付を受けている場合、原則として傷病手当金は支給されません。
これは、二重給付を防ぐための措置です。
したがって、複数の制度を利用する際には、それぞれの条件を確認し、適切に手続きを進める必要があります。
支給が遅れる可能性があるので注意
傷病手当金の支給には一定の審査期間が必要であり、提出から実際に給付されるまでに時間がかかることがあります。
特に、書類の不備や確認作業が遅れると、さらに時間を要する場合があります。
そのため、生活費に余裕がない場合は、申請前に対応策を検討しておくことが重要です。
復職後の注意点
傷病手当金は働けない期間に支給されるものです。
そのため、仕事に復帰した場合、通常は支給が停止されます。
ただし、短時間勤務や軽作業など、条件付きでの復帰をしている場合、収入が傷病手当金より少ない場合には、一部支給が継続される場合があります。
この際、改めて収入状況や就労条件を報告する必要があります。
受給中の社会保険料の扱いも確認しておきましょう
傷病手当金を受け取っている期間中も、健康保険や厚生年金保険の被保険者資格は維持されますが、給与が支払われていない場合、保険料の負担がどうなるかは事業主や健康保険組合によって異なります。
一部の健康保険組合では、給与がゼロの期間の保険料を免除する場合もありますが、これは組合ごとに異なるため、事前に確認が必要です。
受給中に退職した場合も受給できる可能性があります
例えば、退職日の前日までに傷病手当金を受給している、または受給資格を満たしている場合、退職後も最長で1年6ヶ月間支給されます。
ただし、退職後は被保険者資格が喪失するため、申請先や手続き方法が変更される場合があります。
傷病手当金は、病気やケガで働けなくなった際に経済的な支えを提供する重要な制度ですが、利用するには制度の詳細や手続き方法、他の制度との関係性をしっかり理解しておく必要があります。
また、支給に関するトラブルや手続きの遅れを防ぐため、事前に必要な書類や条件を整えておくことが大切です。
そうすることで、療養に専念しながら、経済的な安心を確保することができます。