建設業に強い税理士とは?|経審・工事台帳・外注管理まで対応できる税理士の選び方と活用術

建設業に強い税理士とは?|経審・工事台帳・外注管理まで対応できる税理士の選び方と活用術



なぜ建設業には「業界特化の税理士」が必要なのか

建設業で事業を営む方であれば、一度は「税理士選び」で悩んだ経験があるのではないでしょうか。

確かに、税理士はどの業種でも共通して税務申告や記帳代行、節税アドバイスなどを行ってくれる存在です。

しかし、建設業には建設業ならではの特有の税務・会計事情があり、それに精通していない税理士では、十分なサポートが受けられない可能性があります。

たとえば「経審(経営事項審査)」の点数に影響する決算書の作成や、現場ごとの工事原価管理、未成工事支出金の処理、外注費の源泉徴収などは、建設業ならではの要素です。

これらを理解していないと、税務調査のリスクだけでなく、公共工事の受注チャンスや建設業許可の更新にも影響が及ぶおそれがあります。

つまり、建設業を営む経営者にとって、税理士は「単なる申告代行者」ではなく「業界の事情に通じたパートナー」であるべきなのです。


建設業における税務の特徴とよくある失敗例

建設業に特化した税理士が求められる理由を、実際に現場でよく見られる失敗例を通して見ていきましょう。

まず1つ目が、「原価管理ができていないまま決算を迎えてしまうケース」です。

建設業では工事ごとに利益が異なり、完成までに複数期にまたがることもしばしばあります。

にもかかわらず、月次の粗利を把握せず、請求ベースや感覚で経営判断をしている会社も少なくありません。

その結果、本当は赤字だった工事を黒字だと思い込んで継続し、資金繰りが悪化するというケースに陥りがちです。

次に問題になるのが、未成工事支出金や完成工事未収入金の処理の誤りです。

これは決算書の品質に直結する要素であり、正確に処理できていないと、経審の点数が大きく下がる原因になります。

さらに、税務調査の際に「架空売上」「売掛金の滞留」などと疑われることもあり、経営者にとっては致命的です。

また、一人親方との契約関係や外注費の支払い方法に関するトラブルもよくある相談のひとつです。

形式上は外注扱いであっても、実態が「雇用」だとみなされれば、過去にさかのぼって源泉徴収義務違反を指摘されたり、労務トラブルに発展したりします。

これも、建設業に明るくない税理士だと、事前にリスクを察知できない可能性があるのです。

これらの事例からも明らかなように、建設業の経営には「業界ならではの落とし穴」が多く存在しています。

そして、その穴に気づいて先回りできるかどうかは、税理士の知識と経験にかかっているといっても過言ではありません。


建設業に強い税理士はここが違う!選ぶべき3つの視点

多くの税理士事務所が「幅広い業種に対応」とうたっているなかで、建設業に本当に強い税理士を見極めるには、明確な視点が必要です。

ここでは、見落としがちなポイントも含め、注目すべき3つの要素を解説します。

1. 経審対応・建設業許可制度の理解があるか

建設業を営む上で、公共工事の受注や許可更新に欠かせないのが「経営事項審査(経審)」です。

これは、決算書の内容や自己資本比率、売上高、完成工事高などのスコアを点数化する制度で、決算書の構成や提出タイミングによって結果が大きく変わることもあります。

建設業に精通した税理士であれば、このスコアの仕組みを理解しており、事前に改善提案をしてくれるのが特徴です。

2. 工事台帳や原価管理ソフトへの対応力

税理士の中には、いまだに「紙ベースの資料しか受け取らない」「工事台帳の内容を理解していない」事務所もあります。

しかし、工事別の原価管理は建設業にとって命綱です。

現場ごとの材料費・人件費・外注費の内訳を把握しなければ、粗利率や適正価格を見誤ってしまいます。

Excelや専用ソフト(建設奉行や建設大臣など)との連携ができる税理士であれば、現場別に収支の分析やアドバイスも受けられるため、経営判断の精度が高まります。

3. 外注管理・源泉徴収の知識と実務力

建設業では、一人親方や協力会社との契約・支払いが日常的に発生します。

これらの外注費に対しては、原則として源泉徴収が必要になりますが、どの契約が対象になるかの判断は意外と難しいものです。

建設業に慣れた税理士であれば、契約書や業務内容をもとに、源泉徴収の要否を的確にアドバイスしてくれます。

加えて、支払調書の作成・年末調整まで一貫対応できる体制があるかも重要なポイントです。


経審(経営事項審査)に強い税理士とは?見極めポイント

「経審に強い」とうたう税理士は増えていますが、その実態はさまざまです。

本当に建設業の経営者にとって価値あるパートナーかどうかを見極めるには、以下のような具体的な観点で確認しておくことが必要です。

まず、経審に必要な「完成工事高」「自己資本比率」「利益率」の仕組みを理解しているかを見てください。

決算書の作り方によっては、これらの数値が大きく変動することがあります。

たとえば、未成工事支出金の処理が適切にされていないと、工事高が実態より少なく評価されてしまうこともあります。

また、公共工事の実績や継続受注を目指す場合には、審査項目の一つである「経営状況分析(Y評点)」を重視した経理体制の構築が欠かせません

建設業に特化した税理士は、この点数を上げるためのアドバイスや指導を定期的に行い、点数アップのための中長期的な支援を提供してくれます。

さらに、「どのタイミングで決算書を提出すべきか」や「どの月の工事を完成にすべきか」といった判断も重要です。

こうした判断を経営者がひとりで担うのは負担が大きく、業界経験のある税理士がいれば、その都度適切なタイミングを提案してくれるのです。

最後に、「建設業許可や経審申請書類の作成サポートまで対応できるか」も確認しておくべきポイントです。

許認可に強い行政書士と連携している税理士であれば、許可更新〜決算報告書〜経審〜工事入札までの流れをスムーズに進める体制が整っています。


工事台帳・現場別原価管理に対応してくれるか?

建設業における利益の源泉は、「現場ごとの収支管理」に尽きるといっても過言ではありません。

多くの経営者が頭を悩ませているのが、各工事現場の採算が見えにくいという点です。

そこで重要になるのが、工事台帳を活用した現場別原価管理です。

ところが、一般的な税理士の中には、この「工事台帳」の中身を十分に理解しておらず、月次決算も「全社ベースの粗利」しか出せないケースが少なくありません。

それでは、黒字現場と赤字現場の区別がつかず、何が原因で利益が出ないのかを分析することもできません。

一方、建設業に強い税理士は、工事台帳を正確に把握したうえで、材料費・外注費・労務費・経費を現場単位で管理し、会計データに落とし込むことができます

たとえば、建設ソフト(建設奉行、建設大臣など)やExcelで作成されたデータを活用して、毎月の原価率や現場別の粗利率を「見える化」するのです。

これにより、赤字工事の早期発見や、同じミスの繰り返し防止、適切な発注価格設定など、経営判断の質が大きく向上します。

また、資金繰りの見通しも立てやすくなり、入金タイミングと支出のバランスを取った経営が可能になります。

さらに、原価の見直しを定期的に行うことで、税務署や金融機関にも「経営が健全である」とアピールできるようになり、信用力の向上にもつながります。

このように、工事台帳を軸にした原価管理ができる税理士は、単なる会計処理者ではなく、経営を支えるパートナーと言えるでしょう。


外注費・一人親方への支払と源泉徴収のリスク管理

建設業では、多くの作業が協力会社や一人親方に委託されており、そのたびに発生するのが「外注費」の支払いです。

この外注費に関して注意すべきなのが、源泉徴収の適正な処理です。

たとえば、フリーランスの職人や個人事業主に業務委託する場合、支払いの種類によっては10.21%の源泉徴収が必要になることがあります。

しかし、業務内容や契約の形態によっては、源泉の対象とならないケースもあります。

その判断が曖昧だと、税務調査で「源泉漏れ」と指摘され、過去数年分の追徴課税を受ける可能性があります。

また、一人親方との取引では、「実態が雇用に近い」と判断されるリスクも存在します。

実際には個人事業主であっても、発注者の指揮命令下で働いていたり、専属的に稼働していたりすると、社会保険・労働保険の対象とみなされることもあります。

これも、建設業に詳しい税理士であれば、契約前の段階でリスクをアドバイスしてくれるため、後々のトラブルを防ぎやすくなります。

さらに、源泉徴収に対応していない税理士の場合、年末になると一気に処理が集中し、支払調書の提出漏れや提出ミスが発生することもあります。

その点、建設業に特化した税理士は、定期的な外注費の管理を行い、月次処理と合わせて年末対応まで含めたトータルサポートが可能です。

このように、外注管理と源泉徴収の正確な処理は、税務署からの信頼確保だけでなく、トラブル回避・社内業務の効率化にも直結します。

経理部門に負担をかけず、安心して事業を拡大していくためにも、この領域に強い税理士を選ぶ意義は極めて大きいのです。


法定帳簿・インボイス制度にも対応できるか

建設業では、請求書や領収書の管理が煩雑になりやすく、それに伴い、法定帳簿の整備や保存義務の対応が後回しにされてしまうケースも少なくありません。

工事の規模や業者との取引関係が複雑になればなるほど、会計資料の保管・分類・整合性の確認には高い精度が求められます。

とくに注意すべきなのが、建設業における工事請負契約書や請求書の扱いです。

これらの書類には、発行日、相手先名、内容、金額、消費税の内訳など、法定帳簿に記載すべき情報が詰まっており、保存期間も7年(場合によっては10年)と長期になります。

さらに、2023年10月から本格施行されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)により、消費税の仕入税額控除を受けるためには、「適格請求書」の保存が義務付けられました

これは建設業界において特に影響が大きく、一人親方や外注先がインボイス発行事業者になっていない場合、取引時に控除できなくなるという実務上の問題が発生しています。

こうした背景を踏まえると、建設業に強い税理士には、インボイス制度に対応した取引管理のアドバイスが不可欠です。

たとえば、

  • 誰がインボイス発行事業者かを取引先ごとに管理できているか
  • 請求書フォーマットが制度に合致しているか
  • 工事請負契約と請求タイミングに齟齬がないか

といった点について、税理士がチェック機能を果たせるかどうかで、経理の正確性と事業リスクが大きく変わってきます。

さらに、建設業特有の中間金・出来高払い・出来高査定方式など、請求書の発行タイミングが複雑になりやすい取引形式にも、税理士が柔軟に対応できるかどうかが重要です。

このように、法定帳簿やインボイス制度に対する理解が浅い税理士と契約していると、税務調査の際に思わぬ指摘を受けたり、消費税の控除ができずに損をすることにもなりかねません。

だからこそ、建設業の業務フローに合った帳簿整備・制度対応ができる税理士を選ぶことが重要なのです。


記帳代行だけでは不十分!建設業経営のパートナーとしての税理士像

ここまでで見てきたように、建設業の経営には税理士の役割が非常に大きく、単なる「記帳代行業務」だけでは到底カバーできない広範な知識と判断が求められます。

にもかかわらず、毎月帳簿を作って申告を出すだけ、という形式的な顧問契約が多く見受けられるのも事実です。

しかし、建設業の経営を中長期的に安定させていくには、「財務・税務・業界事情」に通じた実践的なアドバイザーとしての税理士が不可欠です。

具体的には、以下のような支援が求められます。

  • 経審スコアを意識した年度末の決算戦略
  • 工事別損益の分析と利益改善の提案
  • 外注先管理の最適化と労務リスク対策
  • 融資時の財務説明資料の作成支援
  • 将来的な法人化・事業承継までを見据えた節税設計

このような支援が可能な税理士は、単なる作業請負ではなく、経営者と一緒に「利益を守り、未来をつくる」存在となります。

とくに建設業のように、景気の影響を大きく受けやすく、資金繰りが天候や工期に左右される業界では、税理士の提案力が経営の安定に直結します。

たとえば、資材価格の高騰によって現場原価が予定より大幅に上がった場合、税理士がすぐに「資金繰りの再試算」や「節税余地の有無」「経費の圧縮ポイント」などを示してくれれば、経営判断がスピーディーに行えます

こうした柔軟な動きができるのは、建設業の業務フローを理解し、会計と実務をつなぐ知見がある税理士ならではです。

つまり、記帳だけ、申告だけの税理士では、建設業の未来を守るには不十分だということです。

本気で経営を良くしたいと考えるなら、経営の伴走者となれる税理士を選ぶことが、もっとも大切な視点なのです。


建設業に強い税理士を選ぶときのチェックリスト

ここまで読んでいただいた方であれば、すでに「建設業に特化した税理士の必要性」をご理解いただけたと思います。

ただし、実際に依頼する税理士を選ぶ段階になると、どのような観点で判断すべきか迷う方も多いのではないでしょうか。

そこで最後に、建設業に強い税理士を選ぶためのチェックリストをご紹介します。

■ 経審や建設業許可の知識と対応実績があるか

経審スコアに影響を与える要因を理解し、適切な決算書を作成してくれるかどうかは、公共工事の入札を視野に入れる事業者にとって重要なポイントです。

■ 工事台帳や原価管理ソフトへの理解と対応力があるか

建設業専用の管理ソフトに対応しているか、またExcelベースの台帳でもデータを活用して原価分析ができるかを確認しましょう。

■ 外注費・源泉徴収・支払調書の処理に強いか

一人親方や下請との契約形態を適切に見極め、源泉漏れや誤課税を防いでくれる税理士が理想です。

■ インボイス制度への実務的な対応力があるか

自社や取引先の制度対応状況を把握し、記帳方法や控除対象について具体的にアドバイスしてくれることが重要です。

■ 申告・記帳だけでなく、経営支援・資金繰り相談にも応じてくれるか

数字を見るだけでなく、経営の意思決定や融資対応、節税提案までサポートできる税理士であれば、長期的なパートナーになり得ます。

このような視点をもとに比較検討し、自社の規模や業務内容、将来のビジョンに合った税理士と契約することが、「数字に強く、現場にも理解がある経営体制」への第一歩となります。


まとめ|「業界に強い税理士」と組むことで経営の見える化と安定化を

建設業において税理士に求められる役割は、単なる「税務の代行者」ではありません。

むしろ、工事台帳や原価管理を通じて現場を見える化し、経審を見据えた決算を整え、外注費や帳簿処理のリスクを回避するための戦略的なパートナーであるべきなのです。

日々の仕事に忙殺され、記帳や申告を「とりあえず終わらせる」ことが目的になってしまっている方も少なくないかもしれません。

しかし、本当に経営を安定させ、成長を目指すならば、「業界に強い税理士」と手を組むことが、今後の成功の鍵になります。

もし今の税理士に対して、

  • 工事ごとの収支が把握できない
  • 経審についての具体的な提案がない
  • 記帳や申告の相談しかできない

といった違和感や物足りなさを感じているのであれば、一度、建設業専門の税理士との無料相談を検討してみる価値は大いにあります。

数字と現場、経営と将来をつなぐ「頼れる税理士」との出会いが、建設業をより強く、しなやかに成長させてくれるはずです。


建設業の税務に関するよくある質問(FAQ)

Q. 経審に強い税理士はどうやって見分ければいいですか?

A. 「完成工事高」「自己資本比率」「利益率」などの指標に詳しく、建設業許可や経審書類の実務経験があるかを確認しましょう。

顧客に建設業者が多い事務所も目安になります。

Q. 工事台帳がなくても対応してくれますか?

A. 多くの建設業専門の税理士は、Excelや手書き台帳にも対応しています。

原価項目ごとの入力サポートや、帳票のフォーマット提供をしてくれる事務所もあります。

Q. 外注費の源泉徴収について何を注意すべきですか?

A. 一人親方や個人事業主との取引であっても、報酬の性質によっては源泉徴収が必要です。

契約書の有無や業務内容の確認が重要で、判断に迷う場合は税理士に相談すべきです。

Q. インボイス制度で外注先が免税事業者の場合、どうすれば?

A. 原則として仕入税額控除はできなくなりますが、経過措置があります。

必要に応じて価格交渉や、他の事業者への発注も含めた検討が必要です。

Q. 建設業に詳しい税理士に無料相談できますか?

A. はい、多くの事務所では無料相談を実施しています。

工事台帳や見積書、決算書を持参すれば、より具体的なアドバイスが受けられます。


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