副業で確定申告が必要になるのはこんなとき|基準・注意点・よくある誤解を徹底解説

副業で確定申告が必要になるのはこんなとき|基準・注意点・よくある誤解を徹底解説



副業と確定申告の関係とは?まず押さえるべき基本

副業の定義と対象となる収入の種類

近年の働き方改革や物価上昇を背景に、副業を始める方が増えています。

会社員として働きながら、土日にアルバイトをする、スキルを活かしてフリーランスの仕事を請け負う、ネットで商品を販売するといった事例はめずらしくありません。

一口に「副業」と言っても、収入の形はさまざまです。

たとえば次のようなケースが該当します。

  • コンビニや飲食店でのアルバイト収入
  • 知人の紹介などで行う業務委託のライティングやデザイン報酬
  • YouTubeやX(旧Twitter)などから得られる広告収入・投げ銭
  • ハンドメイド作品をフリマアプリや自作ECサイトで販売
  • スキルシェアサービスでの副業ワーク(ココナラ・タイムチケットなど)

これらの副業収入に対して確定申告が必要かどうかは、収入の性質所得金額によって判断されます。

「副業=確定申告が必要」とは限らない

誤解されがちですが、すべての副業に確定申告が必要なわけではありません。

実際には、副業収入があっても、一定の金額以下であれば申告が不要なケースもあります。

特に会社員で年末調整が行われている場合、副業による所得が少額であれば確定申告が不要なことがあります。

その判断基準となるのが、「20万円ルール」と呼ばれる所得基準です。

確定申告が必要になる基準は「所得」か「収入」か?

確定申告が必要になるかどうかの判断で最も多い誤解が、「20万円を超える収入があれば確定申告が必要」というものです。

実際には、判断の基準になるのは「所得(=収入−必要経費)」です。

たとえば、副業の売上が30万円あっても、そのためにかかった経費が15万円であれば、所得は15万円となり、会社員の場合は確定申告が不要になる可能性があります。

ただし、所得が20万円以下でも住民税の申告が必要になるケースがあるため、「申告不要」と思い込んで放置するのはリスクとなります。


副業で確定申告が必要になる具体的なケース

アルバイト・日雇い・短期派遣の副収入

本業以外にアルバイトをして得た収入は、「給与所得」として扱われることが一般的です。

たとえば土日に飲食店で働いた場合、その収入は副収入として認識されます。

この場合、アルバイト先でも源泉徴収が行われていないケースが多く、年間の所得額に応じて確定申告が必要になります。

特に「日雇い扱い」の場合、税金が天引きされていないこともあるため注意が必要です。

フリーランス・個人事業主としての活動(ライター・デザイナーなど)

副業としてライティングやデザインの仕事を請け負う場合、報酬は「雑所得」または「事業所得」として扱われます。

継続性や反復性が認められると事業所得になることもあり、確定申告によって青色申告が選択できる可能性もあります。

報酬は「源泉徴収なし」で支払われることが多いため、自身で正確に所得を計算し、必要経費を差し引いた金額が20万円を超えた場合は確定申告が必要です。

ネット副業(ブログ・アフィリエイト・動画配信・SNS収益など)

インターネットを使った副業のなかでも、近年増加しているのが、ブログ運営やYouTube収益、アフィリエイト報酬、SNS投げ銭収入などです。

これらの収益も「雑所得」または「事業所得」に分類されるケースが多く、金額の大小にかかわらず正確な記録と申告が求められます

また、国外サービス(たとえば海外のアフィリエイトASPなど)を利用している場合、外貨換算の計算も必要になるため、申告の難易度が上がります。

ハンドメイド販売・フリマアプリでの収益

ハンドメイド作品や中古品などをフリマアプリで販売した場合も、ケースによっては確定申告の対象になります。

たとえば、

  • 市販品の転売や仕入れ販売を反復している
  • ハンドメイド作品を継続的に制作・販売している

といった場合には、「副業」とみなされ課税対象となる可能性が高くなります。

一方で、自宅の不用品をたまに売った程度なら、通常は課税対象外ですが、売上や取引回数が増えると雑所得扱いとなるケースもあるため油断は禁物です。

副業収入が20万円を超えた場合の扱い

会社員で年末調整を受けている方は、副業による所得が年間20万円を超えた場合に限り、確定申告が必要になります。

この「20万円」は所得額である点に注意しましょう。

売上ではなく、経費を差し引いた後の純粋な利益のことです。

なお、20万円以下であっても、住民税の申告が必要になる場合があります。

特に自治体によって運用が異なることもあるため、正確にはお住まいの市区町村の情報を確認することが大切です。


確定申告が不要なケースと誤解しやすいポイント

年間20万円以下でも住民税の申告が必要な場合がある

副業に関して「年間20万円以下なら申告しなくていい」という話を耳にすることがあります。

これは一部正しいものの、誤解を招きやすいポイントでもあります。

確かに、給与所得があり、会社で年末調整を受けている人が、副業による所得(収入から必要経費を差し引いたもの)が年間20万円以下であれば、所得税の確定申告は不要とされています。

しかし、住民税の申告は別問題です。

たとえ20万円以下でも、住民税については自治体に申告する義務があるため、「申告しなくてよい」と思い込んでいると、後から自治体から問い合わせが来ることもあります。

経費を差し引いたら所得が少なくなった場合

たとえば副業で売上が30万円あったとしても、事業に必要な出費(仕入れ・交通費・通信費など)が25万円あった場合、所得は5万円になります。

このように「所得が20万円以下」であれば確定申告不要となる可能性がありますが、やはり住民税の申告は別途必要です。

また、経費の根拠が不明瞭だと税務署に否認されることもあるため、領収書やレシートなどの保存が重要です。

会社に副業がバレたくない場合の注意点

副業に取り組む方の中には、「会社に知られたくない」という理由から確定申告を避けたいと考える人もいます。

しかし、確定申告をしなければならない所得があるにもかかわらず、申告をしないのは脱税行為に該当する可能性があります。

どうしても副業を知られたくない場合は、住民税の納付方法を「普通徴収」に変更することで、会社に通知が行くのを防ぐ手段もあります。

これにより、副業分の住民税を自分で納める形にできます。

この手続きは確定申告書の「住民税に関する事項」の欄にチェックを入れるだけで済むため、副業がバレるリスクを下げたい方は活用を検討してください。


副業の種類ごとの申告方法の違い

副業が雑所得の場合と事業所得の場合の違い

副業で得た収入が、「雑所得」として扱われるか「事業所得」として扱われるかによって、確定申告の内容も変わってきます。

一般に、継続性・独立性・反復性がある場合は「事業所得」と判断される可能性があり、逆に一時的・副次的な収入であれば「雑所得」とされる傾向があります。

事業所得と雑所得の主な違いは次のとおりです。

項目 事業所得 雑所得
適用可能な申告方式 白色・青色申告が可能 白色申告のみ
赤字の繰越 可能(青色申告) 不可
他の所得との損益通算 可能 不可

開業届を出している場合の扱い

副業を本格的に事業として取り組んでいる方は、「開業届」を税務署に提出することで、事業所得として申告することが可能になります。

開業届を提出し、さらに青色申告承認申請書も出せば、最大65万円の特別控除が適用されるなど、税制上のメリットもあります。

ただし、副業が本業と競合する内容である場合、就業規則との兼ね合いも発生するため、開業届の提出は慎重に検討しましょう。

会社員でも「青色申告」ができる?

副業をしている会社員の中には、「青色申告は自営業の人だけが使える」と思っている方も少なくありません。

実際には、副業でも開業届を出していれば、会社員でも青色申告が可能です。

たとえば、平日は会社で働きつつ、週末にイラスト制作や物販などをしていて、一定の事業性が認められれば「青色申告者」として申請できます。

青色申告を行うには複式簿記での帳簿付けや貸借対照表の作成などが求められますが、税制面の優遇措置が多く、節税効果が期待できるため、一定の収益がある方には検討の価値があります。


副業で使える経費の考え方と注意点

副業の経費になるもの・ならないもの

副業の所得を計算する際には、収入から必要経費を差し引くことで所得額が決まります。

この「経費」が何に当たるのかを正しく理解しておくことは、確定申告を正しく行ううえで非常に重要です。

副業の経費として認められる可能性がある主な項目は以下のとおりです:

  • パソコンやプリンター、デスクなどの購入費
  • 通信費(Wi-Fi・スマホ料金の一部)
  • 取材や打ち合わせにかかる交通費
  • 必要なソフトウェアの利用料(Adobe、Officeなど)
  • 副業に関連する本や教材、講座費用
  • フリマアプリの手数料、包装資材
  • 自宅の一部を使っている場合の電気代・家賃の一部(※後述の家事按分)

逆に、以下のような出費は経費として認められにくいため注意が必要です。

  • 家族の食事代や生活費
  • 本業に関係するスーツ代(スーツは私用でも着られるため原則不可)
  • 飲み会など私的な交際費
  • 生活必需品(電球や洗剤など)

領収書の保管と記帳のポイント

経費として計上するためには、支出の事実を証明できる書類(領収書・レシート等)を保存しておく必要があります。

通常は5〜7年間の保管義務があります。

また、帳簿づけの精度も大切です。

青色申告を行う場合は、複式簿記による記帳が求められ、貸借対照表や損益計算書の提出も必要です。

白色申告でも、帳簿の作成は必須です。

Excelや手書きでも可能ですが、最近では会計ソフト(freee、マネーフォワード、弥生会計など)を活用する人も増えています。

副業初心者でも比較的簡単に記帳管理ができるため、おすすめです。

家事按分とその注意点(自宅兼オフィスなど)

副業で自宅を作業場として使っている場合、家賃・電気代・通信費の一部を「家事按分」として経費にすることができます。

たとえば、1LDKの部屋のうち1室を完全に作業専用として使っている場合、家賃の3割を経費とするなどの按分が可能です。

ただし、按分割合が現実的でないと否認される可能性があるため、合理的な根拠を持って按分計算を行いましょう。

按分根拠については、帳簿やメモ書きで記録しておくと安心です。


確定申告しなかったらどうなる?リスクとペナルティ

申告漏れ・無申告加算税・延滞税のしくみ

副業の確定申告を怠った場合、税務署からの指摘により、追徴課税(ペナルティ)が科される可能性があります。

代表的なペナルティは以下のとおりです:

税目 内容
無申告加算税 期限後申告の場合、最大15%(または20%)が加算される
延滞税 納期限から日数に応じて発生(年利7.3%上限)
重加算税 意図的な隠蔽や虚偽があった場合は35〜40%の重加算税

つまり、20万円の副業所得をうっかり申告しなかっただけでも、加算税や延滞税によって実質の支払額が大きく膨らむことがあり得ます。

住民税や社会保険料への影響

確定申告をしないと、所得が正しく把握されず、住民税や国民健康保険料が未計算または過少計算になることもあります。

その結果、後から自治体や保険者から連絡が来て、まとめて支払う羽目になることもあります。

また、過少申告が発覚した場合、翌年以降の保険料が高額になるケースもあり、長期的な影響を及ぼす可能性があります。

副業がバレるきっかけは「税金」だった?

よくあるのが、「副業をしていることが会社にバレてしまった」というケースです。

その多くは、住民税の通知から発覚するパターンです。

会社員の住民税は、原則として「特別徴収」(給与から天引き)で会社に通知がいきます。

そのため、副業の所得分まで合算された住民税額に会社側が気付き、不審に思われることがあります。

これを回避するには、住民税を「普通徴収」にして自分で納付する方法を活用しましょう。

申告書の住民税欄で「自分で納付」を選択すれば対応できます。


まとめ|副業をしているなら早めに申告準備を

20万円を超える可能性があるなら事前に対策を

副業を行うすべての人にとって、税金の問題は避けて通れません。

たとえ「少しのお小遣い稼ぎ」のつもりでも、収入や活動状況によっては確定申告が必要になることがあります。

「20万円ルール」や「雑所得・事業所得の違い」を把握し、必要に応じて記帳・領収書の保管・住民税対策などの準備を進めておきましょう。

副業と税金は切り離せない|記録をしっかりと

税務処理において大切なのは、「記録を残しておくこと」です。

収入と支出の詳細、用途、金額などを可能な限り正確に記録しておくことで、申告時のトラブルを回避できます。

特に、スマホやパソコンで帳簿づけができるクラウド会計ソフトは、副業者にとって大きな助けになります。

確定申告のやり方は以下のページで詳しく

具体的な提出方法・期限・必要書類・e-Taxの利用方法などについては、以下の専用ページにてわかりやすく解説しています。

確定申告の時期・やり方まとめ

副業での申告が必要になった方や、どう進めればいいかわからない方は、こちらのページを参考にしながら準備を進めてください。


副業で確定申告する際によくある質問

副業収入が10万円でも申告が必要?

副業の収入が10万円でも、経費を差し引いた所得が20万円を超える場合は確定申告が必要です。

所得が20万円以下であっても、住民税の申告が必要になるケースがありますので注意しましょう。

副業が赤字だった場合でも申告すべき?

副業で赤字になった場合でも、事業所得として申告すれば損益通算や赤字の繰越が可能です(青色申告の場合)。

雑所得扱いの場合は損益通算はできませんが、記録を残しておくことで翌年以降の判断に役立ちます

本業の会社に副業を知られたくない場合は?

確定申告書の「住民税に関する事項」で「自分で納付(普通徴収)」を選択すれば、副業分の住民税が会社に通知されにくくなります。

ただし、会社の就業規則に副業禁止の規定がある場合は注意が必要です。


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