障害年金でもらえる金額と条件とは?1級・2級・3級の等級別の受給額と認定基準の違いをやさしく解説

障害年金でもらえる金額と条件とは?1級・2級・3級の等級別の受給額と認定基準の違いをやさしく解説

障害年金とは?

年金制度の中の「障害年金」の位置づけ

障害年金とは、病気やケガなどで日常生活や仕事に制限が生じた方を経済的に支える公的制度です。

年金というと老後に受け取る「老齢年金」を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、障害年金はそれとは別の仕組みで、年齢に関係なく、障害の状態が一定の基準を満たすと受け取ることができます

また、障害年金には2種類あり、「障害基礎年金(国民年金)」「障害厚生年金(厚生年金)」と、加入している年金制度によって支給される年金の種類や等級が異なる点にも注意が必要です。

障害年金の対象となる「障害」とは

障害年金の対象となる「障害」は、単に身体的な障がいに限りません。

精神疾患、発達障害、内部疾患(心臓病、腎疾患、がん後遺症など)も含まれることをご存知でしょうか。

つまり、「見えにくい障害」であっても、日常生活に支障が出ているのであれば、障害年金の対象となる可能性があるのです。

たとえば、「外では普通に見えるけど実際には買い物すら一人で行けない」といった場合にも、受給対象となるケースがあります。

障害者手帳との違いに注意

よく混同されるのが、「障害者手帳がある=障害年金がもらえる」という誤解です。

実はこの2つには法的根拠や目的が異なるため、片方だけが認定されることも少なくありません

障害年金は「障害の状態により日常生活や就労にどの程度支障があるか」に基づいて判断されます。

一方で障害者手帳は「福祉的支援を受けるための証明書」の役割が強く、同じ障害でも判定される基準が違うことを理解しておく必要があります。

障害年金を受け取れる条件とは

主な3つの要件(初診日・保険料納付要件・障害認定日)

障害年金は、以下の3つの要件を満たしている必要があります。

  • 初診日要件:障害の原因となった病気やけがで初めて医師の診療を受けた日が「公的年金制度の加入中」または「20歳前」であること
  • 保険料納付要件:初診日の前々月までに、保険料を一定以上納付または免除されていること
  • 障害認定日要件:初診日から1年6か月経過した日、または症状が固定された日(これを「障害認定日」と呼びます)において、障害の程度が該当すること

これらを満たしていれば、年齢や就労の有無にかかわらず障害年金の申請が可能です。

障害年金の対象となる傷病例

障害年金の対象になる病気は幅広く、次のようなものがあります。

  • うつ病・統合失調症・双極性障害
  • てんかん・高次脳機能障害
  • 発達障害(自閉スペクトラム症、ADHD)
  • 脳出血・脳梗塞・パーキンソン病
  • 心臓病・腎疾患・肝疾患
  • がん・糖尿病合併症
  • 事故による外傷・切断・視覚・聴覚障害

「重度でなければ受け取れない」と思われがちですが、日常生活の制限度合いが重視されるため、見た目の重さでは判断されない点がポイントです。

働いている場合や主婦でも受け取れる?

よくある誤解のひとつに「働いていたら受給できない」「主婦は対象外ではないか」という声がありますが、実際にはそんなことはありません。

たとえば、就労していてもフルタイムで働けない・配慮が必要な働き方しかできない場合などは、受給対象となる可能性があります

また、主婦の方でも、家事や育児が困難であれば日常生活能力が制限されていると評価されるため、等級に該当すれば受け取ることができます。

うつ病・発達障害などの精神疾患でも対象になるのか

「うつ病や発達障害は対象外では?」と不安になる方も多いのですが、実際には精神疾患の受給件数は年々増加しており、認定基準も整備されています

大切なのは、「どれだけ日常生活に支障が出ているか」。

部屋から出られない・対人関係が築けない・金銭管理ができないなど、生活への具体的な影響が重要視されます。

20歳前に発症した場合(特別障害給付)

20歳未満で障害を負った場合でも、国民年金未加入であったとしても「20歳前障害年金」として障害基礎年金の対象になります

ただし、この場合は所得制限があるため、一定以上の収入があると支給停止となることがあります。

障害年金の等級別|1級・2級・3級の違い

障害等級とは何か

障害年金では、障害の程度に応じて「1級」「2級」「3級」のいずれかに等級が認定されます。

これは「身体の状態」や「精神の状態」が、日常生活や仕事にどの程度の支障をきたしているかによって区分されます。

  • 1級:ほぼ寝たきり、常に介助が必要な状態
  • 2級:日常生活に著しい制限があり、付き添いや援助が必要な場面が多い
  • 3級:労働に著しい制限がある(※厚生年金加入者のみ対象)

等級が上がるほど、受け取れる年金額も大きくなります。

1級・2級・3級の認定基準と違い

障害等級は、主治医の診断書と本人の生活状況を基に、日本年金機構が定める「障害認定基準」に照らして決定されます。

以下に、代表的な基準の違いを簡潔に表にまとめます。

等級主な認定基準の例
1級 身の回りのことも一人で行えず、常時介護が必要な状態
2級 日常生活に著しい制限があり、社会生活に大きな支障がある
3級 労働に著しい制限がある、もしくは著しい制限を受けることが予想される

どの等級に認定されるかの判断基準

認定においては、医師の診断書の内容が最重要です。

加えて、本人の日常生活能力(食事・排泄・移動・金銭管理など)の具体的な困難さや、就労の可否や職場での配慮の要否も評価されます。

診断書に「○○ができる」と書かれていたとしても、「支援があればできる」のか「常時できる」のかで評価が変わることもあります。

初診日の年齢・制度(国民年金か厚生年金か)で異なる点

障害年金の等級の制度には、加入していた年金制度が影響します。

  • 国民年金(自営業や学生、主婦など)⇒1級・2級のみ支給対象
  • 厚生年金(会社員・公務員)⇒1級・2級・3級すべて対象

また、厚生年金加入中に障害を負った場合には、障害手当金(一時金)が支給されるケースもあります(等級非該当でも対象になることあり)。

障害年金の金額はいくら?等級別に受給額を解説

国民年金と厚生年金で金額が異なる

障害年金の支給額は、等級ごとの定額制(障害基礎年金)と、報酬比例制(障害厚生年金)に分かれます。

  • 自営業・主婦・学生など⇒「障害基礎年金」(定額)
  • 会社員・公務員など⇒「障害厚生年金」(報酬比例)

障害基礎年金(国民年金)|1級・2級の支給額

2025年度時点での支給額(月額の目安)は以下のとおりです。

等級年金額(年額)月額換算
1級 約 1,020,000円 約 85,000円
2級 約 818,000円 約 68,000円

※年によって金額は変動します。

※子どもがいる場合、「子の加算」がつき、月額が増額されます。

障害厚生年金(厚生年金)|1級・2級・3級の支給額

障害厚生年金では、加入中の給与・加入期間などによって個人差がありますが、報酬比例で計算され、基礎年金に加算されます

  • 3級:障害基礎年金は支給されず、厚生年金部分のみ支給
  • 2級・1級:基礎年金+厚生年金の合算

厚生年金の目安金額(例)

たとえば、平均報酬月額が30万円で20年間加入していた場合の概算:

等級月額の目安
1級 約15万〜18万円
2級 約12万〜14万円
3級 約5万〜6万円

配偶者・子どもがいる場合の加算

障害年金では、扶養家族がいると「加算制度」があります。

たとえば、

  • 子ども1人につき年間約22万円(第1・2子)
  • 配偶者加算(厚生年金)で年間約22万円

といった形で支給額が増額され、家庭を支える上で大きな助けになります

実際にいくらもらえる?具体例を紹介

たとえば次のようなケースがあります。

Aさん(自営業、うつ病、2級)→ 月約6.8万円(障害基礎年金のみ)

Bさん(会社員、事故による視覚障害、1級)→ 月約17万円(障害基礎+厚生年金+配偶者加算)

同じ等級でも加入していた制度や扶養の有無で支給額は変わりますので、個別の試算が大切です。

障害年金の等級はどうやって決まる?

障害認定基準とは

障害年金の等級は、日本年金機構が定めた「障害認定基準」に基づいて判断されます。

この基準は身体的・精神的な障害の種類ごとに詳細な判断要素が設けられており、生活や就労にどの程度支障があるかを客観的に評価します。

たとえば、視覚障害であれば「両眼の視力が0.04以下」など明確な数値基準があり、精神障害であれば「対人関係の構築や日常の意思決定に著しい困難があるか」などが重視されます。

主治医の診断書が判断の要

実際の認定では、申請者本人の声や印象よりも、主治医が作成する診断書が最も重要視されます

障害年金の診断書は専用の様式に従って記入され、日常生活動作(食事・排泄・移動など)の自立度や、精神状態、就労状況などが詳細に記載されます。

そのため、医師と十分にコミュニケーションをとり、自分の状態を正確に伝えることが非常に重要です。

日常生活動作(ADL)・就労能力の評価

障害認定では、「ADL(Activities of Daily Living)」と呼ばれる日常生活動作の評価が中心となります。

たとえば、

  • 食事は一人でできるか?
  • トイレは自分で行けるか?
  • 買い物や金銭管理はできるか?
  • 対人関係や意思決定に問題はあるか?

といった項目について、どの程度他者の援助を必要とするかが診断書に記載され、それが等級の判断材料になります。

また、仕事ができるか・どの程度の勤務が可能かという点も審査されます。

就労していても、配慮のある職場で短時間勤務に限られる場合などは、認定対象となる可能性があります

等級が軽く判定されることもある?

本来は2級相当の状態であっても、診断書の内容や本人申立書が不十分だったために3級や不支給になってしまうこともあります。

「軽く見られてしまうのでは?」と不安になる方は少なくありません。

特に、精神疾患や発達障害など“見えにくい障害”では、生活の困難さが適切に伝わっていないと正当な等級が得られないことがあります。

そのためにも、診断書作成時の医師との面談や、日常の困りごとを記録したメモ(生活状況報告)などを準備することが大切です。

障害年金の申請方法と流れ

申請に必要な書類と準備

障害年金を申請するには、以下の書類が必要です。

  • 障害年金請求書(日本年金機構の様式)
  • 診断書(障害の種類に応じた専用用紙)
  • 病歴・就労状況等申立書(日常生活での支障や通院歴を記載)
  • 初診日の証明書(受診状況等証明書など)
  • 年金手帳・本人確認書類・住民票など

初診日の病院が廃院している、カルテが残っていないといった場合は、当時の診察券・お薬手帳・紹介状などを代替資料として提出することも可能です。

初診日の証明が取れない場合の対応

障害年金で最も多い申請トラブルが「初診日の証明ができない」というケースです。

初診日が証明できないと、そもそも申請が受理されないこともあります。

そんなときは以下のような手順で対応を進めます。

  1. 医療機関にカルテがあるか問い合わせる
  2. 廃院している場合は、地域の医師会・保健所に相談する
  3. 他の病院への紹介状・受診記録などを探す
  4. 証明が困難な場合は、第三者の証言書を添えることも検討する

特に、精神疾患や若年期の障害では医療機関が転々としているケースも多いため、早めの情報整理が鍵になります。

社会保険労務士に依頼するメリット

障害年金の申請は煩雑で専門的な手続きが多いため、「不支給になったらどうしよう」と不安な方には社会保険労務士への相談もおすすめです。

障害年金を専門とする社労士であれば、

  • 診断書作成時のアドバイス
  • 病歴・就労状況申立書の添削
  • 審査官の視点を踏まえた書類の整備

などをサポートしてくれます。

費用はかかりますが、結果的にスムーズな認定につながるケースも多く、不支給リスクを減らす安心感があります。

認定までの期間と支給開始時期

申請してから結果が出るまでには、通常3〜6か月程度かかります。

無事に認定された場合、初診日から1年6か月経過後の障害認定日に遡って支給されることもあり、初回振込時には過去分がまとめて振り込まれることもあります。

障害年金の受給後に気をつけたいこと

定期的な「更新手続き」とは?

障害年金は一度認定されたら永久に支給されるものと思われがちですが、多くの方に「定期的な更新手続き」が求められます

この更新とは、現在の障害状態が引き続き等級に該当するかを再確認するための審査です。

更新の頻度は障害の内容や等級によって異なり、たとえば精神障害や発達障害では「2年に1度の更新」が一般的です。

障害状態確認届(診断書)の提出時期

更新時には「障害状態確認届(診断書)」を提出します。

提出期限が近づくと、日本年金機構から案内が届きます。

提出期限を過ぎると…

  • 一時的に支給が止まる
  • そのまま失権となる可能性がある

など、生活に大きな影響が出ることもあるため、案内が届いたら早めに医師に診断書作成を依頼し、計画的に準備しましょう。

支給停止や減額になるケース

更新手続きの結果、「症状が改善した」と判断されると、等級が下がったり、支給が停止されることがあります

たとえば、以前は日常生活に常時支援が必要だった方が、ある程度自立した生活を送れるようになっている場合、2級→3級への変更や、支給打ち切りの判断が下ることもあります。

ただし、本当は支援を受けながら生活しているのに、それが診断書に反映されていないという誤解による判断も起こりえます。

更新時にも、自分の状況を正しく医師に伝えることが重要です。

就労すると障害年金は打ち切られるのか

「仕事を始めたら障害年金がもらえなくなるのでは?」という不安をよく耳にします。

実際には、必ずしも就労=支給停止ではありません

たとえば…

  • 障害に配慮された職場で、週2日・短時間のみ勤務
  • 在宅就労・作業所通所など、限定的な働き方

といった場合は、就労していても等級に該当すると判断されることがあります。

反対に、フルタイムで支援なしに働けていると見なされると、等級が軽くなる・不支給になる可能性もあるため、働き方と診断書の内容が一致しているかを意識することが大切です。

受給できなかった・不支給だった場合の対処法

不服申立て(審査請求・再審査請求)の流れ

申請しても「不支給」や「希望よりも軽い等級での認定」となるケースは少なくありません。

そんなときには、決定に対して不服を申し立てる手段があります。

不服申立てには段階があり、

  1. 審査請求(年金機構に対して行う)
  2. 再審査請求(社会保険審査会に対して行う)

という流れで進みます。

審査請求は、決定通知を受け取ってから3か月以内に行う必要がありますので、時間的な余裕はあまりありません

初回の申請であきらめないことが大切

「不支給だった=自分は対象外なんだ」と考えてあきらめてしまう方も多いのですが、実際には、

  • 診断書の記載ミスや曖昧な表現
  • 病歴・就労状況申立書の不備
  • 初診日証明の不完全さ

など、書類の不備や表現のズレによって正当な評価がされなかっただけということもあります。

初回で不支給となっても、情報を整理し直して再申請すれば、等級認定される例も多くあります

再申請・再認定のタイミングとは

一度不支給となった場合でも、再申請は何度でも可能です。

症状の変化や生活状況の悪化があった場合は、数年後に再度申請することで認定されるケースもあります。

また、等級が軽く認定された方も、障害状態が進行した・働けなくなったなどの理由で「額改定請求」という再評価の申請が可能です。

大切なのは、現実に困っていることをきちんと伝えること

自分の困難さを可視化し、適切に審査へ反映されるよう準備しましょう。

まとめ|障害年金は「支え」です。申請に迷ったら相談を

障害年金は、身体や心の不調によって生活や仕事に困難を感じている人のための支援制度です。

「働けない自分に年金をもらう資格があるのか…」と悩む方も多いのですが、今のあなたの状態に合った支援を受けることは“権利”であり、遠慮すべきことではありません

もちろん、制度は簡単ではなく、手続きも煩雑です。

最初は戸惑いや不安もあるかもしれません

それでも、一歩踏み出して申請に向けた準備を始めることで、「誰かに頼れる安心感」が得られるのではないでしょうか。

もしもわからないことがあれば、年金事務所や地域の相談窓口、障害年金に詳しい社会保険労務士など、力になってくれる場所はたくさんあります。

あなたの生活を少しでも安心に、そして前向きにしていくために。

障害年金という選択肢を、どうか一人で抱え込まずに考えてみてください

よくある質問(FAQ)

Q. 障害者手帳があれば障害年金ももらえますか?

A. 障害者手帳と障害年金は別制度のため、手帳の有無が直接の支給可否には影響しません

障害年金は「生活・就労への支障度」に基づいて等級が認定されます。

Q. 働きながらでも障害年金は受け取れますか?

A. 可能です。

就労の内容や勤務時間、配慮の有無などにより、働いていても受給できるケースは多くあります

ただし、フルタイム就労などは等級に影響を与える場合があるため、就労状況は診断書にも正確に反映されることが重要です。

Q. 障害年金は何歳まで受け取れますか?

A. 障害の状態が継続している限り、年齢にかかわらず受給を続けられます

ただし、更新手続きが必要なケースも多いため、更新診断書の提出忘れや内容不備には注意しましょう。

Q. 障害年金が止まる(支給停止)ことはありますか?

A. はい。

障害の状態が改善したと判断された場合や、更新書類の提出が遅れた場合などに支給停止となることがあります

就労状況や生活状況に大きな変化があった際にも見直しが行われる場合があります。

Q. 初診日の病院がなくなってしまっている場合、どうすればいいですか?

A. まずは他院への紹介状、診察券、お薬手帳などを探しましょう。

証明が困難な場合は、第三者の証言や間接資料などを活用する方法もあります

不安な場合は、社会保険労務士など専門家に相談するのがおすすめです。

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